
境界性人格障害という概念は比較的新しく、1980年にアメリカ精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引-第3版』で正式に記載されました。正式に、というのには理由があります。この概念が確立されるまで各学派が数十年にわたり論争を重ねていました。
しかしアメリカ精神医学会の発表により一部の学派だけではなく、広く承認されたことを意味する出来事だったのです。まず20世紀のはじめ、統合失調症の概念が確立されました。また同じころ精神分析の分野でも精神病か神経症かの二分法が診断にあたって重要な意味を持っていました。
そんな中、1953年にロバート・ナイトという精神分析家が「境界状態」という論文を発表しました。つまり、統合失調症でもなければ精神病、神経症でもない患者が現れるようになったのです。ナイトがこのような患者を「ボーダーライン」と名づけました。
その後さまざまな研究がなされましたが、1960年代後半に三つの重要な研究が発表されます。一つ目は、詳細な自我機能評価を行い、その結果から、精神病への移行状態ではない一つの病気であると根拠付けたこと。二つ目は精神分析の立場から、パーソナリティの組織化と機能性において特有の障害を持続的に有するパーソナリティ障害であると明確にしたこと。
三つ目は統合失調症の養子の研究から、この病気を境界例統合失調症と呼んだこと。以上三つの研究が契機となって、その後のより進んだ研究結果を踏まえ、1980年の正式発表となったわけです。
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